筋肉とスピードを科学的に見る
スピード=筋肉
という題でバイオメカニクス的な視点で解説していきます。
ここで例えるスピードとは走力の事です。
「陸上で短距離やってるけど、脚が速くならない」
「最初の踏み出すパワーを強化したい」
こんな方は読んでみて下さい。
少し長くなりますが、お付き合い下さい。
競技に置いて走る事は全てにおいて重要なファクターをしめています。
野球の名選手が実は僕は走ってヒットを稼いでいるんだといった言葉もあるくらいです。
ただし、野球の場合は走る距離(盗塁)が短いのに(リード分を引いて20mぐらい?)対してスプリンター(陸上)は100mや200mのように距離は長いです。
この両者の走るには実は違いがあります。
まず野球の場合は
ピストン動作
このように上体が前傾気味で地面を押す動作でスタートダッシュします。
コレをピストン動作と呼びます。
これは野球に限らずボクシングやサッカーでも方向転換する際に強いピストン動作の動きが必要になります。
スプリンターでも最初のスタートダッシュはこのような前傾になっています。
ピストン動作
しかし、スプリンターの場合は距離が長い為にこの前傾姿勢(ピストン動作)からスイング動作に変わります。
スプリンターがピストン動作を行っているのは距離にして10mぐらいでしょうか?
その後はスイング動作に切り替わるという事です。
ではこちらがスイング動作になります。
スイング動作
どうでしょう?
全員が前傾姿勢では無い事がわかりますよね。
スプリンターは最初は頭を下げて前傾姿勢(ピストン動作)から徐々に頭を上げてスイング動作に移行していく流れになります。
つまり足の速さはバイオメカニクス的に二種類あるという事が言えます。
ピストン動作(スタートダッシュ)
スイング動作(トップスピード)
という事になります。
つまり足を速くするトレーニングとはピストン動作を向上させたいのか?
またはスイング動作なのか?
という事がバイオメカニクスの視点です。
ピストン動作は地面を蹴りだすパワー重視のスタートダッシュ
スイング動作は脚を振る速さ重視のトップスピード
という事で鍛えるメニューにも違いがあります。
スタートダッシュのピストン動作強化
股関節伸展、膝関節伸展を使うスタートダッシュは股関節周辺だけではなく、足関節周りもトレーニングします。
スタートダッシュのみを強化する場合は股関節だけではなく、大腿四頭筋(主な種目バーベルスクワットやフロントスクワット)やつまさき立ちで行うカーフレイズが好ましいです。
フロントスクワット
トップスピードのスイング動作強化
トップスピードは脚を振る関与が強くなります。
従ってお尻の大殿筋や腿裏のハムストリングなど股関節伸展筋が重要になります。
またトップスピード局面では地面をキックするだけでなく、大腿を前に振り出す屈曲筋も必要です。
下腹奥にある腸骨筋、大腰筋などの股関節屈筋がスプリント能力に必要と言われるのはこの為です。
股関節伸展・屈曲筋を鍛え上げる具体的なトレーニングとしてはレッグレイズ、股関節スクワットが代表的です。
まとめ
どこの筋肉を鍛えればいいかという説明は行いましたが、筋肉だけ鍛えても走力は向上しません。
競技スキルの練習は当然ですが、筋肉のバネを使ったプライオメトリクスなども有効です。
また競技によりピストン動作の強化なのか?
スイング動作の強化なのか?を明確にするとトレーニングの質も向上します。
球技全般は基本的にずっとダッシュをしているワケではないのでピストン動作の強化が好ましいです。
陸上の100や200はピストン、スイングどちらも必要なトレーニングと言えます。